■『トモ藤田のバークリー・コネクション』 第2回
掲載誌 : ギター・マガジン 1996年10月号
How are you doing? みんな元気でやっていますか?
先月号からこのコラムを担当させて頂いているTomo Fujitaです。先月は初回と言うことで、自己紹介代わりに、自分のアメリカでの体験談などを書きましたが、今月は僕が講師を務めるバークリー音楽院について書こうと思います。
ちょうど1年くらい前にバークリー音楽院50周年を記念して、「The First 50 Years」という本が出版されました。これはバークリーの歴史を多くの写真や文とともにまとめたもので、更に付録として生徒らによるパフォーマンスをまとめたCDもついています。その中のパーソナルには、渡辺貞夫やタイガー大越、ジョン・スコフィールドなど錚々たる名前も見受けられます。
バークリー音楽院というと、どうしてもジャズ・スクールというイメージを強く持たれていると思いますが、実際はそうでもありません。もちろんトラディショナルなジャズが消えてしまったわけではありませんが、現在ではロックやポップス、R&Bといった、昔では考えられないコースなども作られていますし、僕のようにジャズだけでなくファンクやブルースなど他ジャンルを教える講師も増えています。これはつまり、昔ジャズが当時のポピュラー・ミュージックだったように、今現在流行っている音楽に応じて、学校側がフレキシブルにカリキュラムを変化させているということです。また、最近ではレコーディング技術の発達に伴って、学校側がコンピュータやMIDIを導入するなど、テクノロジー対策もとられています。こういった時代への対応という側面は、バークリー開校当初から有していた傾向のようで、そのあたりの歴史を少々探ってみました。
バークリー音楽院は、'45年にローレンス・バークというピアニストが3人の生徒に理論やアレンジを教えることからスタートします。そして'50年に正式にBerklee
School Of Musicと呼ばれるようになるのですが、その名はローレンスの息子であるLee Berkの名を逆さにしたことに由来しているそうです。当時のバークリー音楽院はジャズ・スクールとして知られ、その後多くの優れたミュージシャンを祖立てると同時に、そのミュージシャンに応じた素晴らしいカリキュラムを作り上げていくわけです。
一方'62年、ジャック・ピーターソンによって、バークリー音楽院にギター科が作られます。その頃の生徒はまだ9人だったそうですが、ともかく主楽器としてギターを扱った授業を行ったのはバークリーが初めてだったようです。この講義は後に'65年になってウィリアム・リービットに受け継がれますが、このウィリアムがまた凄い人でした。現在のように正式な教則本やビデオなどの無い時代に、彼はバークリー出版から『モダン・メソッド・フォー・ギター』『メロディック・リズム・フォー・ギター』など10冊の本を出版し、さらに335曲ものギター・アンサンブルのアレンジ曲を残しています。特に、初の正式なギター・メソッドを作り上げたことは非常に有名で、この一部は現在でもバークリーのギター科で使われているほどです。
そして時は流れて'74年、ついにバークリーにロック系の授業が誕生します。これがロブ・ローズによって開かれた「ジャズ・ロック・アンサンブル」という授業。本来ロブはこのクラスを「バークリー・ロック・アンサンブル」と呼びたかったそうですが、やはり当時の学校の性格上、「ジャズ」という言葉から離れることができなかったようで、このあたり非常に興味深いものがあります。ちなみに現在では「カントリー・アンサンブル」や「シンガー・ショーケース」といったロック系のコースも多く作られており、そのせいか、ロックしかやらない生徒もかなり見受けられます。
そして'85年には「バークリー・サマー・プログラム」という5週間の集中コース(夏期講習のようなもの)も作られます。現在では僕も毎年このコースで授業を担当していますが、それ以外に特別講師として、プロギタリストを招いたりもします。ちなみに今年の夏は全部で226人の生徒が参加しましたが、日本から来た人もけっこういたようです。これは夏だけのコースなので、日本の皆さんも自分の力を試してみるには凄くいいと思います。ぜひ参加してみてください。
現在バークリー音楽院には、総生徒数約2,800人(ギター科では約900人)いますが、そのうち40%は日本を含む諸外国からの留学生です。また、ギター科には45人の講師がいて、暇なときには生徒と先生がジャムったりするなど、毎日楽しく過ごしています。学校以外でも、ボストンは音楽の街で、ミュージシャンはたくさんいるし、ライブ・ハウスもいたるところにあるし、音楽を大いに満喫できる都市です。このコラムを読んで少しでも興味をもたれた方は、ぜひ一度訪れてみてはいかがですか。それでは、また来月。