■『トモ藤田のバークリー・コネクション』 最終回
掲載誌 : ギター・マガジン 1996年12月号
月日がたつのは本当に早いもので、私が担当させていただいたこのコラムも、この4回目を持って最終回を迎えることになりました。僕自身、仕事という以上に楽しく書かせてもらいましたし、ずっと呼んでいてくれた皆さんにはお礼の言葉もありません。そこで今回は、今後海外へ留学を希望している人たちのために、僕自身の経験も含めた、留学のアドバイス的な話をしてこのコラムを締めくくりたいと思います。
僕の場合は、知り合いを通じて入学手続きや奨学金制度といった情報を得て、'87年にバークリー音楽院に入学しました。アメリカに来て一番苦労したのは、『言葉』だったのを覚えています。僕は日本にいた頃、しばらく英会話学校に通ったりして英語の勉強をしてはいたのですが、今から考えてみると、そのときは一度日本語で考えてから英語を理解していたのであって、英語で英語を理解するまでにはなってなかったようです。だから最初のうちは発音もうまくできなくて、相手に自分の考えが伝わらなかったり、学校の授業の内容も全てを理解するというわけには行きませんでした。
そうこうしているうちに、僕は地元のアメリカ人バンドに加入することになったのです。最初のうちこそ、バンドのミーティングなどで、僕だけが何について話し合われているかすら理解できず、何度も聞き返さなければなりませんでしたが、次第に英語で物事を考えられるようになってくると、内容も聞き取れるようになりました。解らないフレーズを人に聞き返したり、英英辞典で調べたり・・・。こうして英語が理解できるようになると、演奏面でもスムーズにことが運ぶようになった気がします。もし、あのまま英語が解らず終いだったら、今のようにアメリカでギグをしたり、こうしてバークリーで音楽を教えるチャンスも逃していたことでしょう。だから、これから留学したいと考えている人がいたら、とにかく言葉だけはある程度勉強しておいたほうがいいと思いますよ。
次に演奏面に関してですが、こちらはあらかじめ、しっかりした先生に正式なレッスンを2〜3年受けておくことをお勧めします。まずは楽器に対する基礎知識や、練習方法、自分の目標などをはっきりさせておくことが大切です。できれば、バークリー音楽院などから出版している本などを通じて、細かいテクニックや楽譜の読み方を学んでおくこともいいでしょう。されには音楽理論、イヤー・トレーニングも必要です。例えば、スケールやコードの組み立て方、メジャー3rdとマイナー3rdの聴き分けなど、勉強しなければならないことはたくさんあると思ってください。
基本的にどこの学校でも、留学するには母国の高校を卒業していることが前提になりますが、その他に学校の成績なども重要な選考の対象になります。とにかく何にしても準備しておくに越したことはありませんので、できるだけいろんな勉強をしておいたほうがいいでしょう。
本当に留学を考えている人は、とりあえずバークリーのオフィスに連絡を取って、アプリケーション・フォームを送ってもらってください。連絡先は(617)266-1400で、住所は1140
Boylston Street Boston, Massachusetts 02215-3693 U.S.A.です。その際に気をつけることとしては、時差を考えて連絡するとと、何でも解らないことは、どんなに些細なことでも質問することです。それから担当者の名前を覚えておくことも忘れずに。
さらに、実際に留学が決まったとしたら、入学する2〜3ヶ月前から現地に来て、実際に英語になれておくことを薦めます。もし可能ならば、その準備期間の間にギター・スクールなどに通っておくのもいいかもしれません。他にも注意するべきことはたくさんあるのですが、スペースの都合もありますので、このあたりで。もしこちらに来て何か困ったことが起きましたら、ぜひ僕のオフィスに連絡をください。電話番号は(617)461-5858、FAXは(617)329-7258です。少しでも皆さんの力になれると嬉しいのですが・・・。
最後に留学するしないにかかわらず、アメリカ人とコミュニケーションするときのコツとして、自分の意見をはっきりと主張することを覚えて置いてください。日本人は本当にマナーの素晴らしい人種ではありますが、時としてそれが欠点になることもあります。何も言わずに相手を立てるという、日本人にとっては賞賛されるべき行為が、アメリカ人にとってはこの人はあまり興味が無いと思われてしまう危険性もあるわけです。どんなことでもいいですから、思ったことはすぐに主張するようにしましょう。とにかく、何事もチャレンジです。恥を恐れないで、精一杯人生を楽しみましょう。「やればできる」ということを忘れないでください。それでは皆さん、また会える日まで。
Good luck, all of you!
──── Your Friend, Tomo Fujita